大願成就 己に勝つ野球 15

倉敷工 底力の勝利 序盤のミスを立て直す

倉敷工 002 017 000 10
倉 敷 120 200 011  7

初回、倉敷高校の先頭打者は、倉工エース陶山の甘いスライダーを見逃さず右中間に二塁打を放つ。
三進後、スクイズバントは空振りになったが、倉工捕手萩原がボールを見失ったのを見ると、倉敷高が先制のホームを踏む。倉敷高は、
2回と4回に連打やスクイズで、それぞれ2点を追加。試合のペースは、倉敷高が握っていた。それでも、すかさず反撃に出る倉敷工の勢いに少しづつ焦りを募らせていた。倉敷工の打線が火を噴いたのは6回。四球や失策で同点に。
さらに、一死満塁で打席に立ったのは捕逸で先制点を許した萩原。萩原のリクエスト
(ポパイ)が鳴り響く。しかし、この試合は、2打数ノーヒット。
「得意な真っすぐを打とう。」三球めの直球を鋭く振り抜くと、打球は遊撃手の横を抜け中前に転がった。
三塁から須田。二塁から清水が帰り、ついに逆転に成功。沸き上がる三塁側倉工大応援団。
「怪我で苦しんだあいつが打ったんだから絶対負けられない。」萩原の適時打に奮起した西野、大森、松本ら上位打線が、
4連打を浴びせ、結局この回7点を奪って試合を決めた。エース陶山は、終盤になっても球威は衰えず、粘りの投球。守備も堅守で盛り立てる。
「レッツゴー陶山ダンダダダン」三塁側は、全員総立ちでメガホンを打ち鳴らし、マウンドの陶山を見つめた。最後の打者に出した萩原のサインは、外角ストレート。陶山渾身のストレートを投げ込むと主審の右手が上がった。「ストライーク」
すると萩原が、一目散に陶山の元に走った。野手陣もベンチからもマウンドへ走り全員がもみくちゃに抱き合ったのだった。一方ベンチでは、中山隆幸部長が和泉利典監督に抱きついた。二人のコンビは抱き合った。これこそ【大願成就】三塁側は、大歓声に揺れた。涙ぐむ控え部員。声を嗄らして叫び続けた在校生。大きな笑顔の父母。応援席は、倉敷工の
7年ぶりの甲子園が決まると雨と涙でずぶぬれになった。新聞に『倉敷工猛打で夏切符』【倉工強打で頂点】『7年ぶり信じていた』【倉敷工集中打で逆転】と出た。

つづく
随時掲載

お願い
本文に迫力を持たせるため、敬称は略させて頂きます事をご了承下さい。

参考
山陽新聞
毎日新聞
(当時の新聞記事を参考にして、一部を引用しています)

協力
小山 稔氏「元倉敷工業高校野球部コーチ」
神土秀樹氏「元倉敷工業高校野球部コーチ」
和泉利典氏「元倉敷工業高校野球部監督」
中山隆幸氏「前倉敷工業高校野球部部長監督」