第85回全国高校野球選手権大会(平成15年夏)
【概要】
2003年8月7日~8月23日出場49チーム
優勝 常総学院、準優勝 東北
大会三日目。台風が過ぎた甲子園球場で1回戦3試合を行い、春夏連覇を狙う広陵と倉敷工が、2回戦に進んだ。
広陵は、エース西村(後に巨人入り)が、東海大甲府から11三振を奪って完封した。
【はじめに3】
「あと一人、あと一人。」3点リードの九回裏倉敷工三塁側応援スタンドでは、スクールカラーの緑色のチュウリップハットをかぶり、燃えるような真っ赤なTシャツを身に着けた約2200人の大応援団。そして、赤と青のメガホンを打ち鳴らし、マウンドの陶山大介を後押しするように、大声援が沸き起こった。
最後の打者の打球を遊撃手渡部がグラブに収め、一塁手須田が一塁ベースを踏む。その瞬間、倉工ナインの勝利を祝福するかの様に、曇り空から太陽の光が差し込んだ。
大応援団は、肩を組み合い校歌が高らかに響き渡った。
倉 敷 工 012 101 000 5
駒大苫小牧 002 000 000 2
投手 陶山
本塁打
序盤から中盤にかけて、効果的に得点を重ねた倉敷工が駒大苫小牧を振り切った。倉敷工は、二回二死二塁から西野の中前打で先制すると、三回は、須田の左超え適時打と敵失で2点を追加。さらに、四、六回にも加点し、試合を優位に進めた。駒大エース白石投手に対して、コースに逆らわない打撃で攻略した。エース陶山の力投も見逃がせない。切れのある直球、スライダーを内外角に投げ分け、強打の駒大打線から9奪三振。失点を三回の2点に抑えた。
翌年から、夏の甲子園を2連覇し、2006年も決勝に進出するなど、全盛期を築いた駒大苫小牧にとっても語り草となるゲームだった。
『これが礼儀と監督』そして『心の野球』前日の試合で、四回途中まで0対8とリードされながら、大雨のためノーゲームに。この日、倉工ナインは、無言で下を向き、そして帽子は深くかぶり、球場を後にしたのだった。誰一人、笑顔の者はいない。
リセットの好機を得た選手たちは、見違えるような試合運びで駒大を圧倒。効果的に得点を加え、エース陶山が、2点に押さえる完勝だった。
倉敷工監督和泉利典は、真っ先に駒大苫小牧に対し「スポーツマンとして、申し訳ない気持ちでいましたが、一生懸命に試合をする事が礼儀だと思いました。」とコメント。敗者に敬意を表したのだった。
それは、部の大方針「心の指導」がもたらしたものと言えよう。
2回戦の相手は、義足で奮闘する曽我選手に注目が集まる今治西。絶望の淵から蘇った倉敷工が、「心の野球」で立ち向かう。
つづく
随時掲載
お願い
本文に迫力を持たせるため、敬称は略させて頂きます事をご了承下さい。
参考
朝日新聞「バーチャル高校野球」
山陽新聞「灼熱の記憶」
(注)現在、「灼熱の記憶」はありません。
瀬戸内海放送「夢フィールド」
(注)現在、「夢フィールド」の放送は、ありません。
協力
和泉利典(元、倉敷工業高校野球部監督)
中山隆幸(元、倉敷工業高校野球部部長監督)
岡山県立倉敷工業高等学校硬式野球部OB会
岡山県立倉敷工業高等学校おいまつ会