捲土重来 平成8年の夏 鹿児島実業戦

「良く、やったぞ。倉敷工」大会十一日目の十八日、倉敷工は、今春の選抜の覇者鹿児島実業と対戦。鹿児島実業の強力打線の、勢いを止める事ができず、惜しくも敗退。ベスト8進出は、ならなかった。

鹿実  011 340 000 9
倉敷工 000 100 001 2

倉工一塁側アルプスは、優勝候補との対戦を、見届けようと最上段までぎっしり。球場全体を揺らすほどの、大声援で倉工ナインを、盛り上げた。
序盤、鹿児島実業のエース下窪投手の巧投や、たたみかける攻撃に苦戦。じりじり点差を広げられる一方的な展開に。倉工スタンドにも、焦りが、生まれ始めた。
【熱戦の足跡】
5点差を、追う四回裏倉工の攻撃。四球で出塁した、俊足西川が、盗塁をするなどで、迎えた一死三塁の好機に、バッターは主砲福原。
その期待に答えるかの様に、福原の打球は、快音を響かせ、二遊間を、ライナーで抜き、西川が、全力でホームを駆け抜けた。「よし、いいぞ。」と、待望の得点に沸く倉工アルプス。五回表、差は、6点に広がり、つづく無死一、三塁のピンチに、先発の諏訪から、エース中原がマウンドへ。一球一球丁寧に投げ込む中原だったが、鹿児島実業の打線を、食い止める事はできず、さらに2点を失う。最終回の攻撃。二死から代打の稲岡、白神渡辺の3連打で、1点を返すが、反撃もここまで。
最後の打者北條の打球は、内野への高い飛球でゲームセット。倉工スタンドは、時間が止まったように、静まりかえった。
【灼熱の白球】
「よく、やった。」と、倉工応援団三千人。
試合を、終えた倉工の選手たちが、一塁側アルプスに陣取る、約三千人の、大応援団のもとに駆けてくると、惜しみない拍手が湧き起こった。スタンドでは、最後まで大声援が続いた。九回に、1点を返すと「まだまだ、行けるぞ。」「最後まで、諦めるな。」と、この試合最大の盛り上がりを見せた。
西川剛正二塁手は、全力を尽くしたプレイ―に、本人も満足。『野球を続けてきて、本当に良かったです。精神的にも、一回り成長したように思います。』
倉工ナインは、胸を張って、鹿児島実業の校歌を聞き、その校歌に合わせて、手拍子を送ったのだった。

つづく
随時掲載

お願い
本文に迫力を持たせたく、敬称は略させて頂きます事をご了承下さい

参考
山陽新聞社「灼熱の記憶」
山陽新聞

協力
小山 稔氏「元倉敷工業高校野球部コーチ」
和泉利典氏「元倉敷工業高校野球部監督」
中山隆幸氏「前倉敷工業高校野球部部長監督」
西川剛正氏「現倉敷工業高校野球部コーチ」