第85回全国高校野球選手権記念大会第12日
倉敷工は、3回戦で青森光星学院に、0対2で惜しくも敗れた。
エース陶山は、無死球と力投。しかし、相手投手の緩球をつけた巧みな投球に打線が散発4安打に押さえ込まれ、三塁も踏む事もできず、8強入りはできなかった。しかし、約1万5000人の観衆から惜しみない拍手が送られた。
バックネット裏からは、『倉工また来いよ』『倉工いい試合を見せてくれてありがとう』の声が上がった。
倉敷工 000 000 000 0
光星学院 100 010 00x 2
一回裏、先頭打者。エース陶山は1球目をいきなり中前に弾き返され少し動揺した。
続く打者に送りバントを決められ一死二塁となる。
次打者は、左飛に打ち取ったが、4番打者に内角を狙ったスライダーが中寄りに入ったところを打たれ先制点を許す。
調子は、悪くなかった。だが、相手打線の振りは鋭く、甘く入った球を打たれる。そんなエース陶山をバックが盛り立てた。
二回裏、抜ければ長打という先頭打者の打球を、中堅手松本が懸命に追いかけジャンプして捕球。フェンスにぶつかって倒れながらもボールを離さなかった。
陶山は、松本にグラブを上げ「ありがとう」の思いを伝えた。
五回裏、二塁打を足がかりに、二死三塁から右前打で1点を加えられる。
七回裏、二死二三塁と攻められた場面では、伝令の赤沢がマウンドに駆け寄り陶山に笑顔で声を掛けた。「スタンドを見ろよ。あんなに沢山の人たちが応援してくれているよ。」陶山は、ぎっしりと観衆がつまった倉工三塁側アルプススタンドに目を向けた。
気持ちが落ち着いた。
次打者を、二塁ゴロに打ち取って切り抜ける。
岡山大会の準々決勝から一人で投げ抜いた陶山。
甲子園の一二回戦では四死球がそれぞれ4だったが、この光星学院戦では、ゼロ。
「みんなのお陰でここまで来れた。応援がすごかったので自分の力以上の投球が出来た。」試合後、涙をぬぐいながら真っ先に口にしたのは、チームメイトへの感謝の気持ち。
倉工三塁側アルプススタンドを埋めた約三千人の大応援団も戦った。
グランドの選手と一体となってこの試合も最後まで、逆転を信じ大応援を送り続けたのだった。
つづく
随時掲載
お願い
本文に迫力を持たせるため、敬称は略させて頂きます事をご了承下さい。
参考
山陽新聞
毎日新聞
(当時の、新聞記事を参考にして、一部を引用しています。)
協力
小山 稔氏「元倉敷工業高校野球部コーチ」
神土秀樹氏「元倉敷工業高校野球部コーチ」
和泉利典氏「元倉敷工業高校野球部監督」
中山隆幸氏「前倉敷工業高校野球部部長監督」