風雲の軌跡 初陣倉敷工 5

監督 小沢 馨物語

 

実力以上の力を引き出す無欲。先を見て足元をすくわれる欲。

昭和24年夏、甲子園初出場を果たした倉工ほど、微妙な勝負のあやを体験

したチームはない。

第31回全国高校野球選手権大会。8月17日 準々決勝。夕暮れの迫る

第4試合。相手は、中京商 以来の3連覇を目指す 小倉北。春夏通算16勝

を挙げた好投手 福島 一雄 を擁し、洗練された野球をするチーム。知名度

は、雲泥の差。高く分厚い壁。 小倉北 4年連続5回めの出場。

 

小倉北 ( 福岡 )   対   倉敷工 ( 東中国 )

 

「 私どもは、勝とうなんて全く思った事はなく、9分9厘とか一厘の望みだとか

世の中には、あるかも知れませんが、その一厘でさえ認められない、10が10

小倉の勝ち。と言う戦前の予想だったんです。 」と、小沢。捕手の

藤沢 新六 は 「 勝てる。と言うのは全くなくて、一生懸命やるだけだなあ。

と、私は思っていました。 」と。スタンドを埋めたファンも、倉工の勝利より

善戦を期待していた。倉工ナインも 「 勝てるわけない 」と荷物をまとめて

宿舎を出発。負けたら、道頓堀川あたりを観光して、帰るつもりだった。

だが、この開き直りが幸運を呼び込む。 「 キープ マイ ペース 」それだけを

唱え続けた、エース小沢の過酷なマウンド。そして、倉敷の少年たちが奇跡

を、起こす。

 

小倉北  020 102 001 0

倉敷工  010 102 110 1  ( 延長10回 )

 

息詰まるシーソーゲーム。倉工の守備の乱れに乗じて、ダブルスチール、スクイズ

と、多彩な攻めで、先手先手と責める 小倉北 に対して、二回と六回に

藤沢の、2ホームランをはじめ、長打で追いすがる 倉工 は、九回ついに

福島投手を、マウンドから引きずり下ろした。延長10回、一死満塁から

横山 のショートゴロの間に、決勝点を挙げ熱戦に終止符を打った。

 

つづく   随時掲載

お願い  本文に迫力を持たせたく、、敬称は略させて頂きます事をご了承下さい

参 考  瀬戸内海放送 「 夢 フィールド 」

OHK     「 旋風よ ふたたび 」

山陽新聞社  「 灼熱の記憶 」