風雲の軌跡 初陣倉敷工 6

監督 小沢 馨物語

第31回全国高校野球選手権大会 準々決勝 第4試合

小倉北  020 102 001 0 6

倉敷工  010 102 110 1 7 ( 延長10回 )

「 何が何だかわからない内に、試合が終わったんです。終わってみたら、勝って

いたんです。 」と、小沢。そして、小沢は次の様に語る。

「 悪い事をした。と思いました。あの時ほど、悪い事をしたと思った事はないです。

小倉に、申し訳ない。 」 試合終了後、ホームプレートを挟んで、お互いが

挨拶をする時、「 ありがとうございました 」が、「 どうもすみませんでした。 」の

心境だったという。夢 破れてうなだれる、小倉北ナイン。試合後の挨拶を交わした

後、小倉北 福島 一雄 投手は、マウンドに戻って、センタースコアーボードを

仰ぎ見て、無意識のうちに、一握りの土をつかみ、尻ポケットに入れたのだった。

小沢は、「 何をやってるんだろう。 」と思ったという。また、その光景を、ある

大会役員が見ていた。その後、福島は、狭い通路で人目を気にせず、肩を

震わせ、泣きじゃくるのだった。小沢は、この時福島に帽子を取り、「 すまなかった 」

と一言言って、その場を立ち去ったのだった。勝った小沢の心を占めたのは、

勝利の余韻でなく、相手福島の姿だった。小沢はこの時初めて、【 常勝チーム

のエースとして、マウンドを守り続けた福島の、プライドと、甲子園に掛ける夢の

大きさを、知ったのである。 】 無欲であるがゆえ、小沢は詫び、無欲であるが

ゆえ、小沢は勝った。昭和24年8月18日、山陽新聞に、『 倉工殊勲の健棒

小倉の三連覇を阻む 』と出た。小倉北ナインは、この日のうちに、夜汽車で

郷里、福岡へと帰って行った。

 

つづく   随時掲載

 

お願い  本文に迫力を持たせたく、敬称は略させて頂きます事をご了承ください

参 考  瀬戸内海放送 「 夢 フィールド 」

OHK     「 旋風よ ふたたび 」

山陽新聞社  「 灼熱の記憶 」