〚魔物〛
大観衆を飲み込んだ甲子園のマンモススタンド。
一球ごとに地鳴りのような大歓声が沸き、銀傘にこだまする。さらに、郷土の期待を一身に背負う重圧。
「実際に甲子園の土を踏んだ者でないと、絶対にわからない。」
経験者は一様にそう話す。
さらに、独特の雰囲気が球児たちの平常心を奪う。
「こんなはずじゃない。」
相手チームだけでなく、「甲子園に住む魔物」にも敗れ、無念の涙を流した球児は数知れない。
〚岡山東商 秋山―土井〛
岡山東商から明治大、そして大洋まで、常に歩みをともにし、東京六大学では三度優勝。昭和35年には、大洋日本一の原動力となるなど、一時代を築いた名コンビである。
しかし、二人が初めて甲子園の舞台に立った昭和26年夏。
岡山東商の甲子園初陣は、まさに「甲子園に住む魔物」に飲み込まれた典型的なケースだった。
〚大正12年創部 岡山東商野球部〛
大正12年創部の岡山東商。
昭和26年夏、下手投げから抜群の球威で押すエース・秋山と、強肩・好リードの捕手・土井を中心に、悲願の甲子園初出場を果たす。
岡山東商の初戦は、怪童・中西太を軸とする打の高松一。
バッテリーを中心とした守りが持ち味の岡山東商。
練習試合では勝っており、自信を持って試合に臨んだ。――そのはずだった。
〚ところが――。〛
ナインの様子がおかしい。
土井は二塁への送球が届かない。
送球は横へそれる。
試合に入っても、ナインの硬さはほぐれない。
秋山は三者連続四球で無死満塁のピンチを招く。
ナインの足は地についていなかった。
そして、三回裏に悪夢が待ち受けていた。
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つづく
参考文献
「球譜一世紀」
「灼熱の記憶」
参考
毎日新聞
山陽新聞
協力
岡山県立倉敷工業高等学校硬式野球部OB会
おいまつ