捲土重来 平成8年の夏 22

第78回全国高校野球選手権大会 岡山大会

決勝  倉敷工 VS 岡山城東

球史に残る激闘となった 岡山城東 との決勝。序盤の失点にも、倉工ベンチは、エースを続投させる。倉工ナインは、エースを励まし、エースは終盤から、本領を発揮する。そして、勝負の延長12回を、迎えた。

倉敷工 100 030 200 002
城 東  011 103 000 00

延長12回表、 倉敷工 の攻撃。この回の先頭打者 西川 が、執念のレフト前で、出塁する。無死一塁。ここで当たっている 3番坪井 が、打席に立つ。しかし、指揮官は送りバントを指示。 坪井 送りバント成功。
一死二塁。 4番福原 が、打席に立つ。3塁側倉工応援スタンドは、全員総立ちで、「 福原よ、打ってくれ 」の祈り。 福原 は、2年生時からのレギュラー。元々、打撃には定評があったが、下半身の使い方に難があった。
そこを、 中山 隆幸部長、 和泉 利典監督 が、軌道修正。本人の努力も、合い重なって、今では 倉工4番スラッガー に成長した。スラッガーは、狙っていた。延長に入って、マウンドに戻っていた 岡山城東 のエース坂本 の、外角スライダーを。その、外角スライダーをライト線に運ぶ。打球は早く、ライトが追い付けず、打球の後を追う格好となった。その間に、 西川がホームイン。 西川 両手を握り締め、両脇を締めて身体を、小刻みに震わせての ガッツポーズ。打った 福原 は、二塁へ。一死二塁。続く5番藤原 は、レフト前ヒット。 福原 は、三塁で止まり、一死一三塁。 6番 高本 も、ライト前ヒット。 福原 ホームインし、この回2点めを上げる。
一死一二塁。 7番強肩巧打の白神 もライト前ヒット。 藤原 果敢にホームに突入するも、好返球で、タッチアウト。二死一二塁。 8番渡辺 の打球は、浅い左中間へ。 岡山城東 の センター永井 が、ダイビングキャッチ。
これで、三死となる。延長12回表が、終わって 倉敷工8点 岡山城東6点。
甲子園が、見えている。延長12回裏、守備につく 倉工ナイン に、3塁側倉工応援スタンドから、大きな拍手が、送られた。ベンチでは、 中山 隆幸部長 和泉 利典監督 が、噴き出る大汗を、タオルで拭った。

つづく 随時掲載

お願い
本文に迫力を持たせたく、敬称は略させて頂きます事をご了承下さい。

参考
山陽新聞社 「 灼熱の記憶 」

協力
小山  稔 氏 「 元 倉敷工業高校野球部 コーチ 」
和泉 利典 氏 「 元 倉敷工業高校野球部 監督 」
中山 隆幸 氏 「 前 倉敷工業高校野球部 部長 監督 」
西川 剛正 氏 「 現 倉敷工業高校野球部 コーチ 」

捲土重来 平成8年の夏 21

第78回全国高校野球選手権大会 岡山大会
決勝  倉敷工  VS  岡山城東
【 どちらも、2チームとも 甲子園 に出場させてやりたいですね。 】
この言葉は、 元 倉敷工監督 小沢 馨 氏( 故人 )が県大会決勝の解説で、良く好んで使っていた言葉である。「 甲子園の夢の大きさ。 」「 賭けるものの大きさ 」を、知り尽くしているだけあってその言葉には、重みを感じさせる。
小沢氏 は、甲子園でも解説を行った。試合は、延長戦に突入。炎の闘志と団結力で、選抜甲子園4強の、 岡山城東 に挑む 倉敷工。その闘志と団結力は、全国屈指の、エースを欠きながらも、勝ち進んだ 昭和36年夏( 当 HP 昭和36年夏のドラマ を参照して下さい )を、呼び起こす。

倉敷工  100 030 200 00
城 東   011 103 000 00

試合は、 6対6 のまま、延長戦に突入。 倉工エース中原 は、序盤にこそ、失点したが、ここに来て 制球力 球威 が、さらに良くなって来ている。延長戦に入っても エース は本領を発揮しているのだ。 中原 を支える物。それは、3塁側倉工大応援団。スタンドからは、『 中原、中原がんばれよ 中原 』あるいは、『 頼むぞ 中原 』の大声援。倉工大応援団が、 中原 を支える。しかし 真に中原 を支えるものが、もう一つある。真に 中原 を支える物。それは、背中の 倉工エースナンバー 1を付けたユニホームにある。このエースナンバー 1 が、 中原 を支えているのだ。 倉工のエース と言うものは、序盤にどんなに打たれても、最後までマウンドに立ち続けるのが、 真のエース。あるいは、どんなに、 肩 や 腕が痛たかろうとも、投げ続けるのが、 倉工エース の宿命。昭和43年夏。
腕も折れよとばかりに、甲子園97イニングを投げ抜いた 黄金の左腕小山 稔投手( 当 HP 青春ヒーロー を参照して下さい )
また、昭和50年選抜甲子園で、40度の高熱を発し、フラフラになりながらもマウンドを死守した 兼光 保明投手( 当 HP 風雲の奇跡 涙の甲子園 を参照して下さい )そこには、 倉工歴代エース の継投がある。
歴代エースは、 倉工エース の 宿命 を背負い投げ抜き、そして倉工エースの 誇り と 喜び がある。試合は、 延長12回 に入った。
この回の先頭打者は、 2番西川 からだった。

つづく  随時掲載

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本文に迫力を持たせたく、敬称は略させて頂きます事をご了承下さい

参 考
山陽新聞社 「 灼熱の記憶 」

協 力
小山 稔 氏 「 元 倉敷工業高校野球部 コーチ 」
和泉 利典氏 「 元 倉敷工業高校野球部 監督 」
中山 隆幸氏 「 前 倉敷工業高校野球部 部長 監督 」
西川 剛正氏 「 現 倉敷工業高校野球部 コーチ 」

 

捲土重来 平成8年の夏 20

第78回全国高校野球選手権大会 岡山大会

決勝  倉敷工 VS 岡山城東

六回が終わって、 倉敷工4点 岡山城東6点。岡山城東が2点をリード。
倉敷マスカット球場は、内野スタンドほぼ満員。
両校、凄まじい応援合戦が、繰り広げられている。
かつて、昭和30年40年代、倉敷工小沢監督、岡山東商向井監督の 両雄 が戦った 岡山県球場。
バックネットを境に両校の 応援合戦 は、神宮球場の 早慶戦を彷彿させた。
岡山県高校野球黄金時代だった。
試合は、序盤の失点にも、倉工ベンチはエースを続投させる。ナインは、エースを励まし続ける。
迎えた、七回倉敷工の攻撃。
ここで、倉敷工は同点に追いつく。
その原動力は練習をして来た成果を発揮できた事にある。

倉敷工  100 030 2
城 東   011 103 0

七回表、倉敷工の攻撃。
この回先頭の 2番西川 は、セーフティーバントを、試みるも、城東エース坂本の好フィールディングに会い、アウト。一死。
3番坪井 は、外角を右に打ち返した。
球は、ライトライン上に落ち、坪井 は2塁へ。打ち抜いた一撃だった。一死2塁。
4番福原 は、フルカウントから、フォワボールを選ぶ。
ここで、右打ちのうまい 5番藤原 が打席に立つ。 藤原 の打球は、右中間を真っ二つに破った。
坪井福原 が帰り、 6対6 の同点とする。
打った 藤原 は、三塁打で、一死3塁。
ここで 城東ベンチは、投手交代。
6番高本 の当たりはショートゴロ。 藤原 ホームに突入するも、タッチアウト。二死1塁。
7番白神 は、内野ゴロで三死となる。
これまで 倉敷工ヒット10本 岡山城東9本。
大いに盛り上がる、倉工応援スタンド。
中山隆幸部長、和泉利典監督。このコンビは、早くから、 打倒岡山城東 を目指していた。
打撃練習では、 エース坂本 を想定し センター返し を徹底。
外角の球は、右打者なら、右( ライト方面 )へ打ち返す事。
この徹底した指導が、七回坪井 藤原 に練習の成果が出たのだった。
勝つ事の 秘訣 は、「 一つの事を、徹底する 」にある。
燃える 【 夢 】を賭けて、 倉工ナイン は、戦い続ける。

つづく 随時掲載

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本文に迫力を持たせたく、敬称は略させて頂きます事をご了承下さい

参 考
山陽新聞社 「 灼熱の記憶 」

協 力
小山 稔  氏 「 元 倉敷工業高校野球部 コーチ 」
和泉 利典氏 「 元 倉敷工業高校野球部 監督 」
中山 隆幸氏 「 前 倉敷工業高校野球部 部長 監督 」
西川 剛正氏 「 現 倉敷工業高校野球部 コーチ 」

捲土重来 平成8年の夏 18

第78回全国高校野球選手権大会 岡山大会

決勝  倉敷工 VS 岡山城東

炎の闘志で、この年の選抜甲子園4強、中国地区王者の岡山城東に挑む 倉敷工。
しかし、四回が終わって 3対1 と岡山城東がリード。
そして、五回ついに 倉敷工 が逆転する。
その逆転の原動力は、畳みかける攻撃、繋がる打線だった。

倉敷工 100 03
城 東  011 1

五回表、 倉敷工 の攻撃前ナインをベンチ前に座らせて、 和泉監督がアドバイス。
この回の先頭打者は、8番渡辺。 渡辺の打球は、3塁ベース付近へ。三塁手良く好捕したが、一塁へ高い悪送球。
その間に渡辺 は、2塁へ。無死2塁。
次の打者は、 玉島商戦 でサヨナラを打った 9番エース中原。中原は、打席に入ると 送りバント の構え。
大きくリードしていた 渡辺。捕手が2塁へ牽制した。
すると 渡辺 は3塁へ。無死3塁。
中原 は、投手ゴロで一死3塁。
打順は、1番に返り、 北條。
北條 は、ショートライナー。
二死3塁。2番 西川 の打球は、センター前への小フライとなった。
3塁側倉工応援スタンドからは、「 落ちた、落ちた 」の声。
セカンド ショート センターの3人が追うも、真ん中に落ちた。セカンドベースが空いているのを見た 西川 は一気に、セカンドベースにヘッドスライディング。この 西川 の好走塁が倉敷工 に、大きく流れを呼び込む。
倉敷工2点め。二死2塁。
3番坪井 は、レフト前ヒットで、 西川ホームへ。3点目で、3対3の同点となる。沸き上がる3塁側倉工応援スタンド。
二死1塁。打者は4番福原。ここで、 和泉監督 が 坪井 に出したサインは、(走れ)。坪井盗塁を成功させ、二死2塁。畳みかける攻撃の 倉敷工。
この場面での盗塁は、難しい場面。
和泉監督 は、 坪井 の走塁能力を買ったのだろう。
4番福原 は、センター前に打ち返して坪井 ホームへ。
3連打で4点目を上げ、逆転する。4対3倉敷工逆転。
二死1塁。 5番藤原 は、右方向に打ち返し、二死1、2塁とする。
倉敷工4連打。 6番高本 は、三振に倒れ三死となる。4対3と逆転した 倉敷工。
沸き上がる倉工応援スタンド。
しかし、決勝までのチーム打率4割3分越えの 岡山城東 の、強力打線が エース中原
に、襲いかかった。

つづく 随時掲載

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参 考 山陽新聞社「 灼熱の記憶 」
協 力
小山 稔 氏 「 元 倉敷工業高校野球部 コーチ 」
和泉 利典氏 「 元 倉敷工業高校野球部 監督 」
中山 隆幸氏 「 前 倉敷工業高校野球部 部長 監督 」
西川 剛正氏 「 現 倉敷工業高校野球部 コーチ 」

捲土重来 平成8年の夏 17

第78回全国高校野球選手権大会 岡山大会。
決勝  倉敷工 VS 岡山城東
先攻を取った 倉敷工 は、一回早くも1点の先取点を上げる。
しかし、 岡山城東 は、二回三回と各1点を上げ、1対2と逆転する。
三回が終わったところで、 倉敷工エース中原 の投球を見てみよう。
右打者に対し内角を、うまく使っている。その内角の球は、自然的にシュート回転していて、バットの芯を外しているかのよう。また、左打者に対し、外角の球はたとえストライクゾーンであっても、外にスライドしている様に見えて、遠く感じるだろう。さらに、膝元に食い込むスライダーが、いい高さに決まっている。こうして迎えた四回裏、岡山城東の攻撃。あれほどにまで、鉄壁の守備を誇っていた、倉工守備陣に、ほころびが出てしまう。一死から、セカンドゴロを、西川が一塁へ、悪送球してしまい、打者は2塁へ。一死2塁。次の打者を三塁ゴロに仕留め、二死2塁となる。次の打者は、センターのやや右へのライナー。センター北條、ショートバウンドをこぼしてしまい、2塁ランナーが、ホームに帰り、1対3になる。二死1塁。次の打者は、3塁フライとなり、チェンジかと思われたが、サード坪井、落としてしまった。
二死1.3塁。ミスが続く 倉敷工。ふんばりどこの、エース中原。中原はここで、精神的にタフなところを見せる。次の打者に対して、内角に投げ、センターフライに打ち取り、三死とした。

倉敷工 100 0
城 東 011 1

五回の攻撃に、ベンチに帰る 倉工ナイン。そして、ベンチ前で円陣を組んだ 倉工ナイン。 和泉監督 は、ナインをグランドに座らせた。
身振り手振りで、アドバイスをする 和泉監督。選手を、落ち着かせて、いるのだろう。益々の老練さを感じさせる 和泉監督。
五回表、 倉敷工 の攻撃は、 8番ショート渡辺 からだった。

つづく  随時掲載

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参 考  山陽新聞社 「 灼熱の記憶 」
協 力  小山 稔  氏 「 元 倉敷工業高校野球部 コーチ 」
和泉 利典氏 「 元 倉敷工業高校野球部 監督 」
中山 隆幸氏 「 前 倉敷工業高校野球部 部長 監督 」
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捲土重来 平成8年の夏 16

第78回全国高校野球選手権大会 岡山大会。
決勝  倉敷工 VS 岡山城東 両校、共に 甲子園 が見えている。
実力差は、全くない。試合の 明暗を分けるとしたら、バントミスや、送球ミス等のちょっとした ほころび。 あるいは、スコアーブックに記載されない様な、ミスが出た場合であろう。 試合は、両校 緊張感 のある中開始された。こうした中、先攻を取った 倉敷工 が、先取点を上げる。その先取点とは、徹底した センター返し と、積極野球だった。
倉敷工 1   城 東
 3塁側倉工応援スタンドからの、激 を背に、 1番北條 が、打席に 入った。 北條 は、岡山城東のエース坂本投手 が投じた第一球め を、センターに弾き返した。打球は、低いライナーであったが、センター永井 選手の正面へ。しかし、 北條 の打球は、 甲子園4強、中国大会 優勝投手で、スライダーがいい、 坂本投手 に対して、『 行けるぞ 打てるぞ 』と、ナインに伝えた一振り。 北條 からの 伝え を見た 2番西川 の打球は、投手強襲内野安打となる。 坂本投手 の グローブに一旦球が入ったかに見えたが、打球が強くグローブをはじいて しまい、球はマウンドを転がり落ちたのだった。これで一死一塁。3番坪井 が、打席に入る。 坪井 は、決勝まで、12打数5安打をマーク。ここで 和泉監督 が、強気の攻めを見せる。 一塁ランナー西川 に出した サインは、『 走れ 』。 西川盗塁成功。 一死二塁。 北條 西川 1.2番コンビの 盗塁 は、全て成功していて、失敗は一度もない。 動揺が、見られる 坂本投手。二塁へ牽制した 球 は、センターに抜けた。 それを見た 西川 は3塁へ。一死三塁。 ここで、 坪井 は、センターに 打ち返し、先取点1点を、上げる。3人続けての、低いライナーでのセンター 返しは、圧巻。 坪井 猛打倉工 の口火を切る。沸き上がる倉工3塁 側応援スタンド。一回の守備につく、倉工ナイン。 エース中原 は、 立ち上がりに、難があるだけに、気がかり。 中原 どの様な投球を見せる のだろうか。
つづく 随時掲載
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山陽新聞社 「 灼熱の記憶 」
協 力  小山  稔 氏 「 元 倉敷工業高校野球部 コーチ 」
     和泉 利典氏 「 元 倉敷工業高校野球部 監督 」
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     西川 剛正氏 「 現 倉敷工業高校野球部 コーチ 」

捲土重来 平成8年の夏 15

第78回全国高校野球選手権大会 岡山大会。  決勝   倉敷工 VS 岡山城東 53校が参加して、51校が球場を去った。残ったのは、 倉敷工 と 岡山城東。 これから、甲子園出場を目指した熱い戦いが、始まる。
 岡山城東 は、 春の選抜甲子園で、4強入りを果たす。そして、春の県大会優勝。8校選抜 ( 現在は廃止 )も優勝。更には、春の中国大会でも優勝。公式戦無敗を 誇る強豪校。
 一方、 倉敷工 は、春の県大会決勝で 岡山城東 に敗れ 準優勝。県8校選抜も、 岡山城東 に敗れ準優勝。 倉敷工 3度めの 正直となるか。主将 北條 剛 は、「 城東と当たっても、ぼくたちの野球を するだけです。 」と、コメント。
 7月29日、倉敷マスカット球場。11時の開門に 合わせ、ぞくぞくと入場者が集まって来た。
 白いTシャツに、赤のマジックで 『 勝つぞ 倉工 』『 必勝 倉工 』と、書いた 倉工生 がたくさん目立つ。 球場の外では、急造の 自主応援団 が、振り付け、発生練習をしている。 【 「倉工4番打者 福原一樹 」 行けえ 行けえ かっ飛ばせよ かっ飛ばせ カズキ カズキ おーカズキ 】その一人が言った。【 従来の応援団員は、4人 なんです。それに、ぼくたちが加わって、盛り上げます。もし、 甲子園 に 行ったら、 50人 にします。 】と。さらには、ソフトテニス部をはじめ、各部が 練習を止めて、応援に駆け付けた。春の県大会、8校選抜で 準優勝に 甘んじている 倉敷工。全校が一丸となって 古豪復活 に掛ける 倉敷工。
  こうして、午後一時 プレーボール のサイレンが鳴った。先攻を取った 倉敷工。 『 1番センター 北條君 』と、場内アナウンスされた。すると、3塁側倉工応援 スタンド、あちらこちらから、【 行けよ北條 】【 北條一本 行けえ 】と、 大きな 激 が飛んだ。

つづく  随時掲載
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参 考  山陽新聞社 「 灼熱の記憶 」
協 力  小山  稔氏 「 元 倉敷工業高校野球部 コーチ 」
     和泉 利典氏 「 元 倉敷工業高校野球部 監督 」
     中山 隆幸氏 「 前 倉敷工業高校野球部 部長 監督 」
     西川 剛正氏 「 現 倉敷工業高校野球部 コーチ 」

捲土重来 平成8年の夏 14

頼もしきOBが凱旋して、3度めの夏を迎え、今 野球部部長として チームを引っ張る 中山 隆幸。小沢野球を追求し、ますます老練さ を加えて行く 監督 和泉 利典。この二人を補佐するOBコーチの 藤原 勝利 と 永山 勝利。炎の闘志 と 団結力の 平成8年の 夏。スタッフは、 投 攻 守 三拍子揃った大型チームを作り上げる。 和泉 が目指す 【 小沢野球 】とは、いったいどの様なものだろうか。 岡山東商 など、他の伝統校に比べ、後発ながら 倉敷工 は、短 期間で 甲子園の常連 となった。チームを率いていたのは、昭和24年 夏の甲子園初出場時のエースだった 小沢 馨。『 故人。当HPで 硬式野球部連載を、カテゴリーに分類しました。の中 風雲の奇跡 を参照してください。2018年8月14日 』卒業後、プロ野球 阪神 に も在籍した 指揮官 は、 打撃のチーム を、追い求める一方、 豊富な経験に基ずく 巧みな采配 で知られた。また、左腕 から 快速球 と 何種類もある カーブを操り 甲子園に4季連続出場。 3年時の、昭和43年は 春夏連続で 4強入りし 頂点に迫った 小山 稔。( 同じく、当HPカテゴリーに分類の中 青春ヒーローを 参照して下さい ) コーチとしても支えた 小山 は、「 何十っ手も先を読み 最善の 手 を打つ。プロ野球の監督になっても 成功 する力が あったのでは。 」と語る。こうして迎えた 平成8年夏の、岡山大会。 53校が参加して開催。今、51校が球場を去った。残るは、この年 春の選抜甲子園で、4強入りし 中国地区王者の 岡山城東 と 倉敷工 の2校。 倉工校内 そして 白壁の街 が、慌ただしく なって来た。

つづく  随時掲載

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協 力 小山 稔氏 「 元 倉敷工業高校野球部 コーチ 」
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    西川 剛正氏 「 現 倉敷工業高校野球部 コーチ 」

捲土重来 平成8年の夏 13

第78回全国高校野球選手権大会 岡山大会準決勝 倉敷工 VS 関西 前年と同じカードになった岡山大会準決勝。前年は、全国的に有名になった エース左腕吉年投手 を持つ 関西。その 関西 に対して一回に3点、二回に2点、三回に1点を取り、早々と 吉年投手を攻略したかに見えた。だが、徐々に調子を取り戻して来る 吉年投手。また、中軸打者に連続長打を打たれ、終わって見たら 6対7 の逆転負けを喫した 倉敷工。「 あの試合の悔しさは、いつまでも忘れられません。 」と、 現 倉敷工野球部コーチの 西川剛正。 倉敷工 が勝利したのは、エースの力投と、繋がる打線 集中打だった。
   関 西   100 000 000  1
   倉敷工  000 050 010  6
一回にタイムリーを打たれ、1点を献上した 倉敷工。しかし、二回以後安定した投球を見せる エース中原俊博。投手力に不安を抱える 関西。その関西投手に、五回 倉工打線 が襲いかかった。 4番福原 が左中間にタイムリー3ベースヒットで、2点を勝ち越す。 6番高本 も右中間に、タイムリー3ベースを打つ。長短6本のヒットで、5点を取る。エース中原は、初回の1点だけに押さえ 6対1 で勝利を飾った。この時、主将の 北條剛 は「 初回に1点取られたんですが、いつでも追いつける。今日は、たたみかける連打が、出たので良かったです。 」と、コメントした。一方、 西川 は「 2年連続の準決勝 関西 戦は先輩の分まで、絶対に負けるわけには、行かなかったです。 」そこには、真っ赤に燃え上がる 炎の闘志 と 力強い 団結力 がある。投手はいい。守りもしっかりしている。攻撃も全員が、3割を超える。1、2番の 北條 西川 の俊足コンビが出ると、すぐに足でかき回す。この、1、2番コンビが、相手チームにとって、いやな存在となっている。そして、クリーンアップで点を取る。また、下位打者には勝負強い打者がずらりと並ぶ。こういうチームは、なかなか作れるものでは、なかろう。平成8年の夏は、熱い。

   つづく  随時掲載

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協 力  和泉 利典氏 「 元 倉敷工業高校野球部監督 」 
      中山 隆幸氏 「 前 倉敷工業高校野球部部長 監督 」
      西川 剛正氏 「 現 倉敷工業高校野球部 コーチ 」

捲土重来 平成8年の夏 12

第78回全国高校野球選手権大会 岡山大会準々決勝
 倉敷工 VS 玉島商闘志を燃やし、必死で白球を追う球児は、高校野球ファンの心を揺さぶる。 倉敷工 の勝利を決定づけたのは、思い切りの良さとエースのバット、そして下位打線の打棒だった。
玉島商  010 020 000  3
倉敷工  000 100 201  4
 9回表 玉島商 の攻撃。この回の先頭打者が左中間を破り、三塁打を打ち、無死三塁とする。ここで エース中原 は、次の打者を内野ゴロに仕留める。一死三塁となったところで 玉島商ベンチ はスクイズのサイン。
 しかし、バントは、セカンド方面への小フライとなる。
 セカンド西川 猛ダッシュしてすくい上げ、三塁へ転送。ダブルプレーを完成させる。この場面現在、倉敷工高野球部コーチの 西川剛正 は、次の様に語る。「 スクイズを予想していました。自分の所に来る様なイメージがありまして。身体が、うまく反応しました。負けたくない気持ちが強かったです。普段のイメージトレーニングが、役に立ちました。 」
 9回裏 倉敷工 の攻撃。二死となったところで、7回にタイムリーを打った8番ショート 渡辺 が打席に立つ。思い切った打球は、三塁手右を破りボールは、レフト線を転々となる。 渡辺 は、二塁へ。二塁ベース上でガッツポーズをする 渡辺。これで、二死ランナー二塁。ここで打席には毎日の早朝練習で、打撃練習に取り組んで来た 9番エース中原。
 中原 は、狙っていた。【 俺のバットで、サヨナラを決めてやる。 】と。
 中原 の打った打球は、三遊間のド真ん中を破った。いいスタートを切った渡辺。三塁ベースを蹴って、ホームに走った。『 走る 走る 走る 』そして、ホームに足からスライディング。そして、レフトからバックホームが帰って来た。
 【 セーフ 】サヨナラ、サヨナラ勝ちの 倉敷工。
 渡辺 両ひざをグランドにつき、両手の握りこぶしを高く差し上げ、背中を大きく後ろにそらして ガッツポーズ。そこへ、ナインが集まって来た。大熱狂の 倉工応援スタンド。試合後 監督 和泉利典 は、「 1点差でも、勝利を貰ったという事で。この勢いを持ってやって行きたい。 」と、コメントした。
 つづく  随時掲載
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協 力  和泉 利典氏 「 元 倉敷工業高校野球部監督 」
      中山 隆幸氏 「 前 倉敷工業高校野球部部長 監督 」
      西川 剛正氏 「 現 倉敷工業高校野球部 コーチ 」